「命にかかわる内容なのに、医師と患者で意思疎通ができていない」と、
独立行政法人・国立国語研究所(東京)が、難解だったり誤解が多い
医療用語を分かりやすくしようと、言い換えに取り組んでいる。
医師への調査で、特に患者に理解されていないとみられる
50~100語程度をピックアップ、どのように分かりにくいのか分析し、
言い換えたり、説明する方法を検討している。
来年春ごろに結果を公表し、全国の医療現場にも用語解説の
手引を配布する計画だ。
<ケース1>
「合併症」(ひとつの病気に関連して起こる新しい病気や病症)がでる
可能性があると患者家族に説明したら「手術失敗ですか」と聞かれた。
<ケース2>
「頓服」(症状が出たときに必要に応じて服用する)の意味が理解されず、
1日3回定期的に内服していた。
<ケース3>
患者らに「ホスピス」(終末期ケア・緩和ケアを行う施設または在宅ケア)を
すすめたところ悲観的な態度で強く拒絶された。
<ケース4>
「五十肩」(中高年にみられる肩関節周囲炎)と説明したら
「60歳には治るんですね」と聞き返された。
研究所が医師に調査したところ、医療用語に関する
医師と患者との間の言葉の問題には、ケース1~4のように
言葉の難解さや誤解、言葉のイメージなどの類型に分かれるという。
研究所が昨年実施した医師への調査で、「意味が通じなかった言葉」で
最も多かったのが「予後」。
残された生存期間などを示す言葉だが、ほとんど通じないという。
「経過観察」も「何もしない」と誤解され、患者からクレームを受けた
と回答する医師もいた。
一方、患者側の調査でも8割以上が
「医師に分かりやすく言い換えたり、説明を加えてほしい」
と回答している。
研究所の田中牧郎言語問題グループ長は
「病院で使用される言葉は、患者にとっての分かりやすさや、
誤解を招かない明確さということに配慮されておらず難解。
言葉をイメージでとらえ、意味をきちんと理解していない患者も多く、
医師もどう言い換えればよいか悩んでいる。
手引が医師と患者のコミュニケーションの手助けとなれば」
と話している。
<ケース3>
患者らに「ホスピス」(終末期ケア・緩和ケアを行う施設または在宅ケア)を
すすめたところ悲観的な態度で強く拒絶された。