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がん細胞の増殖も阻止するP53タンパクの活性化理由

P53タンパクは、低酸素濃度、熱ショック、DNA傷害などの細胞が受けるストレスに反応して細胞内のP53レベルが急上昇して活性化し、細胞周期の停止や細胞死を起こして、ストレスを受けている細胞の増殖を阻止する。この働きはガン細胞の増殖を阻止するのにも役立っている。P53を活性化する細胞ストレスは様々なので、その活性化を調節する過程をひとつのタンパクにまとめて説明するのは難しいが、EMBO Journal に発表されたルビとミルナーの論文によるとそれが可能かもしれないと、イギリスのベアトソンがん研究所の博士らはのべている。
 ルビとミルナーによると、全ての細胞ストレスシグナルは、核仁を破壊することによってP53を活性化するらしい。核仁は、細胞内のタンパク合成の場であるリボゾームのサブユニットを組み立てるのに重要な役割を果たす核内構造物である。ルビとミルナーは、P53を活性化するシグナルは同時に核仁を破壊すること、DNA障害を起こすが核仁は破壊されないように核の一部だけに紫外線を照射するとP53は活性化しないこと、逆にDNA障害は起こさずに核仁が破壊されるような抗体を投与するとP53は活性化することを示した。
 ルビとミルナーによると、核から細胞質へリボゾームのサブユニットが運ばれる時と同じメカニズムが、P53の輸送にも使われる。核仁が破壊されると、P53が輸送されなくなった結果、細胞内に蓄積するらしい。また別の可能性として、核仁の破壊によってある特定の核仁タンパクが核内に放出された結果P53が活性化されることも考えられている。

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2007年04月29日 20:52に投稿されたエントリーのページです。

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